今朝、恋した

今朝、久しぶりに恋をした。ぶさいくな若い女の子だった。鯉や金魚みたいな顔をしていたので、スイミーをその娘めがけて撒きたくなった。スイミーは、僕が子供の頃市販されていた魚の餌だ。鯉か金魚か、どっちかの餌なのだが、どっちのやつだったかは忘れた。子供の頃、僕は金魚を飼っていて、父方のじいちゃんが鯉を飼っていた。餌の撒き方に違いがあって、金魚には指で掴んでパラパラ、鯉には手掴みでバッサーと撒いた。たぶんスイミーは金魚の餌だ。今そんな気がした。♪よく食べるスイミー、と歌うコマーシャルがテレビで流れていた。じいちゃんは働き者だった。うちの親父は働くのがあんまり好きじゃなかった。いつもふざけているか、酒を飲んでいるかだった。今の僕と一緒だ。じいちゃんは金持ちだった。うちは貧乏だった。じいちゃんも親父も、僕にギャグを教えた。じいちゃんは、わざわざ自分の部屋に僕を呼び出して、小さく丸めたティッシュを鼻の穴に詰めて、それをポンポン鼻息で出すだけのギャグを僕に教えてくれたことがあった。話がそれ過ぎた。クーラーの効いた居酒屋での最初の数十分の気持ち良さのような、思いを告げることもない恋だった。リラックスした。寝て怒られた。

吐きまクリスティーの掻きまクリスティー

僕の部屋には冷房器具が一切無い。扇風機すら無いのだ。ほんなら夏、今この時期、どうやって熱帯夜を乗り切っているのかというと、二つだけある大きな窓と小さな窓を両方とも全開にして、そうするとやはり蚊が入ってきて僕の体を刺し放題に刺しよるので、蚊取り線香を焚いて、さらにギャッツビーの汗拭きシートで顔から尻からとにかく全身を拭きくちゃに拭きまくって、乗り切っているのである。ちなみに汗拭きシートで拭いた箇所は、まぁ僕のこの場合は全身だが、やがてヒンヤリとしてきて気持ちが良くなるので、ヒンヤリシート、と僕は多少の愛情を込めてそう呼んでいる。
嘘である。何が嘘なのかというと、乗り切っている、というのが嘘で、そんな事をしたくらいで乗り切れるほど近頃の熱帯夜は甘っちょろいもんではなく、夜毎夜通し汗は止まらず掻きまクリスティー、顔面は苦渋でしかみっぱなしなのだ。無理矢理乗り切れていることにしているのである。
そんな日々の中、先日友人宅に泊めていただく機会があった。友人の部屋はクーラーが効きまくっていた。夜が来るたび苦渋に満ちたしかめっ面に豹変していた僕の顔面はその時、ゆるみにゆるんでエビス顔。調子に乗ってエビスビールでも飲みたかったがそこは貧乏人、身分相応の発泡酒にしてそれを浴びるほど飲んだ。友人が眠ってからも、一人でニヤニヤしたまま朝方まで飲みまくった。
朝八時、仕事に出た友人と別れ、また今日も灼熱か、と真っ青な空を見上げた後、バスに乗り込んだ。
吐き気に襲われた。途中でバスを降りて、手近な便所に駆け込んだ。何も食っていなかった僕は水分ばかりを吐き、わしゃ銭湯のライオンか、と思った。便所を出てしばらく歩いて、また同じことを繰り返し、また同じことを思った。

もーもー太郎

昔昔あるところの、おじいさんとおばあさんがトイレ内喫煙をしていました。海の家の仮設トイレで、男用の小便器がひとつと和式の個室がひとつあるだけの簡単なトイレでした。おばあさんは個室で、おじいさんは小便器で、それぞれ用足しをしていたのです。ふたつのタバコのけむりがモクモクと上がり、外から入ってくる風の加減で、ふたつのけむりは交わり、やがて汚いハート型になりました。用足しを終えたおじいさんとおばあさんは、そのハート型のけむりを見て、運命を感じてしまいました。そして、その場で、トイレです、結ばれました。
おばあさんは川に泳ぎに、おじいさんは鬼ヶ島に鬼をしばきに行きました。夕方、おじいさんはむちゃくちゃにしばかれて帰ってきました。片手にとうもろこしをひとつ持っていました。泳ぎ疲れて寝ていたおばあさんが頭を上げて、それどうしたの?と、とうもろこしの事を聞くとおじいさんは、鬼の角取ってきたった、とすぐにばれる嘘をつきました。
翌年の夏、ふたりの間に玉のような男の子が産まれました。ふたりはその子を蹴ってサッカーをしました。近所に住む旦那さんにしかられて、すぐやめました。ふたりはその子に、ジーコという名前を付けようとしましたが、旦那さんにふざけるなと言われて、しぶしぶ第二候補のもーもー太郎という名前を付けました。
もーもー太郎は成長し、30歳になりました。森に友達を探しに行きました。犬と猿とキチガイの鳥が友達になってくれると言いました。しかし三匹とも、それには条件があります、と憎たらしい顔で声をかぶせながら言いました。お前牛になれ、と言いました。もーもー太郎は友達欲しさに牛になりました。もーもー。おしまい。

顔面をさらせ

顔面をさらせ、せ、先生さよおなら皆さんさよおなら、ら、らくだのタバコくださいあーキャメルですかそうですハイてちゃうがなこれキャビンやんキャメルきゃ・め・る、る、ルームナンバーなんぼ?ごめん部屋の番号何?、に、にぃちゃんだおれはおまえの、の、の、ノー、お、起きて最初にすることを変えたら昨日と変わるかな変わるわよって言って、て、手羽先がうみゃー、あ、網戸、ど、どこでおぼえたのそんな技、ざ、ザイールだよ、よ、よつんばいになって吐くんだようち和式だから仕方ないんだ、だ、ダックスフンドシ、し、シーツは白に限る、る、ルールはあるに限る、る、ルイ君ゆう子ふたり知ってる、る、ルーツ探るなダーツせえ、え、エロい、い、いつか死ぬし、し、しょんべんたれ、れ、レスキュー、う、うんこ、こ、古今亭志ん生、う、うさぎ年うちの親父、じ、時間割り、り、理科社会、い、言い忘れたけどさよおならブリッぶりぶりぶりっ、リッケンバッカーじゃかーん股パッカーン。

捨て鉢日記

7月某日 全所持金数百円、銀行に預けてある金数十円。全部おごるから呑もう、と友人に誘われ、ほんなら甘える、と本当に甘えてタバコ代、呑み代、さらに泥酔後のタクシー代まですべておごってもらう。友人二人と僕でその日呑んだのだが、その二人に自分を運営する費用をすべておごってもらったのだ。おまけに500円分のクオカードまで貰った。とても楽しかった。

7月暴日 着ぐるみを着て接客するアルバイトをやる。客は若いお母さん達とその幼い子供達。子供達に殴られたり蹴られたりするが、それは当たり前。しかし大人のふりをしたとっつぁん坊やの僕は途中、一瞬カッとなって小学三年生ぐらいの男の子の腕を思い切り掴んでしまった。男の子の顔が突然の恐怖に引きつった。反省した。

7月帽日 新婚の友人宅にベースの光成と行く。友人は花嫁。だんなさんにはまだ僕は一度も面識がないので、会うまでビビッていた。光成のアホが、だんなは体格が良く強そうだ、などと僕を脅していたからだ。しかしいざ会ってしゃべると、気を使うおもろい兄ちゃんだった。また遊びに行きたいと思った。

7月26日 中島らもの命日。アバラモバラモという10人組のバンドを組んで、吉祥寺のライブハウスで演奏した。中島らもは小説家で有名だがロックバンドもやっていて、その数々の曲の中から10曲を選んで演奏した。僕はボーカルをやった。とても楽しかった。その後、朝11時まで呑んだ。

7月棒日 アルバイトで名古屋に行った。ものを食うたび、うみゃーを連発してバイト仲間達のヒンシュクを買って楽しんだ。二日酔いで名古屋城に行って、つまんねーを連発しながら、写真を撮ったり、綱を引いたり、寝ている猫を起こそうとしたりして楽しんだ。

2011年12月
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